今日も元気だ

だらだら打った文字列

紅の話

何のために口紅を塗っているんだろうか、と時々思う。マスクの下にこっそり仕込んだ血色は、普段なら歯を磨く休憩時間だけにしかお目見えしない。それでも色を差した唇は鏡に映る度に少し弧を描く。

女でいることを時に盾にしながら、時に呆れながら。要は保湿と、健康的に見えればいいというだけ。

リップの色を変えたことに気付いてくれるような人には興味なんてないのに。少しでもよく映りたくて、浅ましさを隠すように女を塗り重ねていく。

 


「女の人は大変だね」

「そうだね、でも楽しいときもあるよ」

 

どんな大変さかも、どんな楽しさかも決して教えてあげない。